あるところに、電車の「戸袋」を、ドアが閉まるところに付いているゴムの部分のことだと勘違いしている子供がいました。
その子は「戸袋に注意!」という注意書きを見て「確かにドアに挟まれたら痛いものなぁ」と得心し、ドアが閉まる時にはよくよく注意するようにしていましたが、悲しいかな、本当に気をつけなければいけないドアが開く時については、全く注意をはらっていませんでした。
そのため、ある日、その子は誤って手を戸袋に引き込まれてしまい、思いもかけない痛みと引き換えに戸袋の本当の意味を知ることになりました、という展開であればドラマチックなのですが、特にそうした痛い思いをすることはなく、いつしか何かのきっかけで戸袋の本当の意味を知り、その後はきちんとドアが開く際に気をつけるようになりました。
そんなふうに、相手が言葉の意味をわかっていない状態で説明をしても、何も伝わらないどころか、時には誤った意味を伝えてしまうことさえあるので気をつけないといけないなぁ。ドアへ寄りかけていた体を、ドアが開くタイミングにあわせてそっと浮かせながら、そんなことを考えた満員電車の朝でした。