やわらか図書館学

主に大学図書館のデザイン・広報に関するブログです。

『司書名鑑 : 図書館をアップデートする人々』感想

『司書名鑑 : 図書館をアップデートする人々』、この本は「ライブラリー・リソース・ガイド」の連載「司書名鑑」をまとめた図書です。さまざまな現場で活躍されている31名のライブラリアンへのインタビュー記事がまとめられています。

インタビューを読んで頭に浮かんだのは、「自分でうごく」ことと「人と繋がる」ことの循環です。何か新しいことを始め、そこで人と出会い、それを受けてまた新しいことを始め、という循環が多くのインタビューで見られたように思います。おそらく「自分で動く」、「人と繋がる」のどちらかだけでは広がりは生まれず、その二つをきちんと循環させいくことが活動の幅を広げていくためには大事なのだろうと思いました。人と繋がらずにちまちまとブログを書いている自分には耳の痛い話ですが。

また、この本を読んで、他の人々のライフストーリーを聞くことを、とてもおもしろいと感じている自分に気づきました。その人が置かれた状況で、どのように考え、どのように動いたのかを知ることに惹かれます。先日の『大学の図書館』の特集「足跡をたどる」(第42巻第2号)も、とてもおもしろかったです。この本には、大学図書館関係者は少なかったですが、たくさんの大学図書館関係者の方々の話を聞いてみたいと思いました。本当は職場でも、他の人が何をどう考えているのか、もっと聞きたいと思うことも多いのですがなかなか。

最後に、特に印象に残ったインタビューをご紹介して終わりたいと思います。個人的には谷一文子氏と柳与志夫氏のインタビューが強く印象に残りました。お二方とも行政サービスの一つとして冷静に図書館を捉えられている視点がとても素敵だなと思いました。

首長が決め事としてやるのであれば、現場も上へのアピールが必要ですよね。教育委員会だけでは難しい部分もあるのかもしれないし、指定管理のようなやり方だと、企画課とかまちづくり政策課とかから予算がついて、バーっと動くじゃないですか。スピードが全然違うんですよ。そういうところに認知されると大きく動くんです。そういうポイントみたいなのを、もっと司書の人たちがよく学ばないと。(p.43)

図書館の人がよく「行政は何をやっているのかわからない」とか「行政はおかしい」という言葉を口にしますが、それを初めて聞いたときは本当にびっくりしました。ただ、実際にそういう意識を持った人が多いということもわかりました。とはいえ、公立図書館というのは行政サービスの一つであり、行政の一環なのだから、母体である行政が何を考えているのかわからないと言って切り捨ててしまうのは、発想が根本的に間違っていると思います。(p.79)

当然、大学図書館や学校図書館でも重要な視点ですし、こうした視点を実際に活かしていくためには、やはり動き、繋がっていくことが大事なのかなと思いました。

お相手は、やわらか図書館学でした。

参考

www.seikyusha.co.jp