やわらか図書館学

主に大学図書館のデザイン・広報に関するブログです。

グラフィックデザインの練習をするための本の選び方

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前々から書きたいと思っていたことを書こうシリーズ。

それなりの期間、本屋に通い、たびたび地雷をつかみながらも、少なからぬお金を落とし続けてきたなかで、なんとなくわかってきた「グラフィックデザインを練習するための本の選び方」について、書いてみたいと思います。

といっても、ぜんぜん大したことではなく、先に結論を書いてしまうと、

  • その本はどういう本か
  • 今の自分に必要な本はどういう本か

の2点を意識するといいのでは、というお話です。

なお、一応最初に断っておきますと、私は本はたくさんみていますが、その割に肝心のデザインスキルは推して知るべしなので、あらかじめご了承ください。

どこにあてはまるでしょうか

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上の図は、本の内容を分類するための補助線として、横軸に「基本-応用」、縦軸に「総論-各論」という線を引いてみたマトリクスとなります。横軸の「基本-応用」は、「理論-作例」と言い換えてもいいかもしれません。アイラブマトリクス。

左下であれば、基本的な内容を総論的に広く扱った本、左上であれば、配色やレイアウトなどの各論についての基本を学ぶための本、それぞれの右側のエリアはその作例、といったイメージです。

本屋さんなどで見かけて「この本いいなぁ」と思った本を直感的に買うのではなく、いったん立ち止まって、その本は上の図でいうとどこに当てはまるのか、自分はそういう本を必要としているのか、という二点を考えると、より適切な本が選べるのではないかと思います(もちろん直感的に本を買うのも楽しいのですが。)。

例えば、基本を学ぶ必要があるのに、いきなり具体的な作例しか載ってない本や、TIPS的な細かいことしか書かれていない本を選んでしまうと、せっかく買った本を活かせないかもしれません。また、漠然と「デザインの本が欲しい」とだけ考えて選ぶのと、今自分は配色を学びたいんじゃ〜ということがわかって選ぶのでは、大違いかと思います。

それぞれの本の例

せっかくなので、上記のマトリクスのそれぞれのエリアに該当する本の例を、自分が読んできた本の中からご紹介したいと思います*1。なお、便宜上、4つに分けていますが、その中でも、「応用寄りの基礎」「各論に近い総論」などありんす。

1. 基本-総論の例:最初に学ぶための本

このエリアは、上でも触れましたが、基本的な内容を総論的に広く扱った本となります。これから練習を始めたいという方は、この種の本から目を通すのがいいのではと思います。

自分のおすすめは以下の3冊です。

ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版]

ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版]

 

基本を体系的に学ぶという観点からはやや外れてしまいますが、こちらの本も導入としてはおすすめです。

このエリアで紹介した本は、全部「版元ドットコム」さんで、使用可能な書影が提供されていたので、マトリクスに置いてみました。ノンデザイナーズデザインは、最近の版では配色の章が設けられたりしましたが、元々はレイアウトについての各論よりだったかと思うのでちょっと上。

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2. 応用-総論の例:作ってみるための本

こちらは4の「各論-応用」との線引きが難しいところ(というか別に無理に分けなくてもいい)なのですが、 ここでは特定のトピックに偏らず、広くいろんな作例が紹介されている本を選んでみました。「基本」で学んだことを活かして、実際に作ってみる段になって、役にたつ本たちと言えるかと思います。

あるあるデザイン

あるあるデザイン

  • 作者:ingectar-e
  • 発売日: 2019/01/18
  • メディア: Kindle版
 

また、デザイン全般について、広く深〜く触れたいという意味では、こういった本もあげられるかと思います。

うっとりあじわいじっくりデザイン

うっとりあじわいじっくりデザイン

  • 作者:mmm.
  • 発売日: 2019/04/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

3. 基本-各論の例:補うための本

デザインをしていくうえでの各論の基本について学ぶ本たちです。ここでは、配色とタイポグラフィの本を例にご紹介していますが、他にもレイアウト、ロゴなどのデザイン要素や、和風、女性向けといったテーマ限定など、さまざまなトピックがあります。実際にいろいろ作ってみて、自分はここが足りないなぁと思った時に、それを補うために手にとる感じかなと思います。

各論の導入として、デザインエッセイ的な本もいいかと思います。

フォントのふしぎ  ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?

フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?

  • 作者:小林 章
  • 発売日: 2011/01/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

4. 応用-各論の例:ガシガシ作るための本

各種基本が身について、さぁこれからガシガシ作るで〜というときのための本。うえでも書いたように「2. 応用-総論」との線引きが、いまいち自分の中でできていないのですが、こちらはより限定したトピックの作例の本を挙げてみました。配色見本帳や素材集みたいなものもこちらに入るかと。

 

と、長々書いてきましたが、こうして書いてみると何もデザインの本に限った話ではなく、何の分野の本でも共通する当たり前のことですね。

図書館の選書も同じで、この本は総論か各論か、基礎か応用か、ということの意識や、今の蔵書に足りないものはそのうちのどれか、ということになってくるかと思います。 

ご紹介した本もあくまで例としてあげているだけで、他にもたくさんいい本があるので、ぜひ本屋さんで探してみてください。

お相手はやわらか図書館学でした。おやすみなさい。

*1:1冊だけ発売前というかまさに今日発売だけど、もう「当たり」であることが約束されているので